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自賠責保険の損害賠償責任に該当する行為

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自動車損害賠償保障法(略称:自賠法)では交通事故等により他人に損害を与えたその行為自体に故意や過失がなくても、自動車の運転手及び運行供用者に対して損害賠償責任を負わせています。

これはつまり、他人に損害を与えた行為について過失のあるなしを立証出来なくても、運転手を含む運行供用者に対しては、無過失責任として損害賠償責任を取らせると言う事です。

しかし逆に言えば、ここで言われている「他人に損害を与えた行為」に該当しなければ無過失責任が適用される事はありませんので、場合によっては自賠法による損害賠償責任を免れると言う事も言えます。

ちなみに、自賠法に記されている自動車損害賠償責任については以下の通りです。

【自動車損害賠償保障法】
第二章 自動車損害賠償責任
第三条 自己のために自動車を運行の用に供する者は、その運行によつて他人の生命又は身体を害したときは、これによつて生じた損害を賠償する責に任ずる。ただし、自己及び運転者が自動車の運行に関し注意を怠らなかつたこと、被害者又は運転者以外の第三者に故意又は過失があつたこと並びに自動車に構造上の欠陥又は機能の障害がなかつたことを証明したときは、この限りでない。

条文では自動車損害賠償責任に該当する行為として、「運行」という言葉を用いていますが、この時の運行と言うのは自賠法第二条に以下のように定義されています。

【自動車損害賠償保障法】
第一章 総則
第二条  この法律で「自動車」とは、道路運送車両法 (昭和二十六年法律第百八十五号)第二条第二項 に規定する自動車(農耕作業の用に供することを目的として製作した小型特殊自動車を除く。)及び同条第三項 に規定する原動機付自転車をいう。
2  この法律で「運行」とは、人又は物を運送するとしないとにかかわらず、自動車を当該装置の用い方に従い用いることをいう。
3  この法律で「保有者」とは、自動車の所有者その他自動車を使用する権利を有する者で、自己のために自動車を運行の用に供するものをいう。
4  この法律で「運転者」とは、他人のために自動車の運転又は運転の補助に従事する者をいう。

自賠法第二条で「運行」とは、人又は物を運送するとしないとにかかわらず、自動車を当該装置の用い方に従い用いることをいうとあります。ここで言われている当該装置とは、ハンドル、ブレーキ、アクセル、ドアなどの自動車の構造上整備されている全装置の事を指すと言う判例が出ています。

用い方に従い用いるとは、アクセルを踏んで自動車を運転する事やハンドルを回して進行方向を変えるなどと言う走行状態における使用方法は当然の事として、自動車を操作していない駐停車の場合であっても用い方に従い用いるに含まれるという判例が出ています。

運行状態にあたるケース

運行状態にあたる具体例としては以下の通りです。

  • 自動車の走行
  • 固有装置の使用
  • 駐停車

自動車の走行中は運行状態にあたりますので、走行中に他人に被害を与えた場合は損害賠償責任を負う事になります。また、無接触事故であっても因果関係があれば損害賠償責任を科せられる事もあります

固有装置と言うのは特殊自動車に代表される装置の事で、コンクリートミキサー車のミキサーやダンプカーのダンプなどが該当します。固有装置の使用中も運行状態になりますので、これらの装置の操作に起因した事故については損害賠償責任を負います。

駐停車中は一見運行していないように思えますが、他の車両や歩行者の通行の阻害をして他人に危害が及ぶ原因となりますので、法律上の運行に該当します。停車中のドアの開閉による事故につきましても、運行に該当する事があります。

運行状態にあたらないケース

運行状態にあたらない具体例としては以下の通りです。

  • 人力による荷物の積み降ろし
  • 修理・整備
  • 第三者による行為
  • 自然現象による行為

車両からの人力による荷物の積み降ろしと言う行為自体は自動車の装置の操作とは無関係なので運行には当たりませんが、ダンプカーでダンプさせた状態で人力で荷物を積み降ろし中に起きた事故については運行中と解される事があります。

修理工場や整備工場での自動車操作は運行には当たりませんが、試運転や軽微な点検の場合は運行中と解される事があります。

第三者が車に火をつけて他人が被害を負ったような場合や、積み荷が化学反応を起こして発火して事故につながった場合には、自動車の装置の操作とは関係がありませんので運行には当たりません。

地震・台風・竜巻などによって自分の自動車が他人を傷つけた場合でも、運行には当たりませんので損害賠償責任は負いません。但し、あらかじめ台風や竜巻が来ると分かっていて自動車を走行させた場合の自然現象による事故については、運行中と解される事があります。

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