物損事故の損害賠償算出基準になるものはその「モノ」の市場価値です。ですから物損事故の損害賠償算出基準は一定ではなく、その「モノ」ごとに異なります。
基準は一定ではありませんが、今はインターネットで「モノ」の価値を簡単に調べることができるので、物損事故であっても損害賠償額を計算するのはそれほど難しいことではありません。
ただ、計算の時に気を付けてほしいのは以下の4点です。
- 愛着と言う理由で慰謝料を請求できることはないと思ったほうが良い。
- 店舗を破壊して休業させた場合は休業補償が損害賠償の対象になることがある。
- ペットは物損扱いになる。
- 芸術作品は修理や買い替えができないから損害賠償額が高額になりやすい。
自動車を破損させた場合
損害を与えたものが自動車であれば、事故に合う前の状態に戻すための修理費用や買い替え費用がそのまま損害賠償額として計算されます。
もしこの時、所有者がこの自動車に相当の愛着を持っていて愛車が傷ついたことによる精神的苦痛を訴えたとしても、そのような理由で慰謝料が認められることはほぼありません。
一般的な物損事故の場合、愛着のあるなしで慰謝料を請求できるようにしていたら、嘘でもほとんどの人が愛着があると答えてしまうでしょうから、物損事故では基本的に慰謝料は認められていないのです。
店舗を破損させた場合
店舗を破損してしまった場合、その店舗の修理費用は当然損害賠償に含まれますが、修理期間中の休業で喪失したであろう利益や営業再開のお知らせに係る広告宣伝費も損害賠償に含まれることがあります。
休業補償はその店舗が通常得ていた1日にあたりの利益が加算されていくので、修理が長引いて休業期間が長期にわたってしまうと思いがけないほどの高額になることもあります。
ペットが交通事故で被害を受けた場合
ペットとして飼われている犬や猫などは法律上「モノ」として扱われるので、ペットの損害は人身事故ではなく物損事故になります。
物損事故の損害賠償の範囲には「モノ」のケガ・後遺障害・死亡などは含まれないので、人身事故の時のように入通院1日あたりに〇〇円の慰謝料を損害賠償として請求したり、ペットが死亡したからと言って死亡したペットに対して慰謝料をいくら支払いなさい、という基準はありません。
このような場合はペットに対してではなく、飼い主の精神的苦痛に対する慰謝料が損害賠償の対象になることがあります。
世界に1点しかないような芸術作品が交通事故の被害を受けた場合
芸術作品はその芸術性が評価されるという特性があり、どんな素材のモノであってもオリジナルの状態が一番価値が高いですし、世間に認められていることがほとんどです。
ですから修復ができたとしてもそのものの価値が下がった場合は、下がった価値の部分も損害賠償に含みます。
またその芸術作品の所有者がその作品を失ったことによって精神的苦痛を受けた場合は、相応の慰謝料が損害賠償の対象になることがあります。