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物損事故でも慰謝料請求が認められるケースは少ないですがあるにはあります。

示談で話がまとまったケースについては知ることができませんが、裁判による慰謝料請求が認められたケースにつきましては判例がありますので、そちらをご紹介します。

事故で愛犬を失ったことへの慰謝料請求

ペットは法律上「モノ」として扱われますので、このケースは人身事故ではなく物損事故の判例です。

昭和40年の話なので今と貨幣価値も違いますし動物への愛情感覚も違いますが、愛犬を失った方に財産的損害として5万円の慰謝料が認められたケースです。

財産的(犬のモノとしての価値)損害についての記述はありませんが、通常であればその損害についても当然認められます。

■昭和40年11月26日/東京地方裁判所/民事第27部/判決/昭和40年(ワ)1788号:判例時報427号17頁

「前記畜犬は原告が鍾愛していた名犬で、その時価は200,000円を下らない。またその死亡による原告の悲しみはその後の被告側の非情な態度によって倍加され、これを金銭に評価した慰藉料額は50,000円を下らないものである。」

事故で墓石が破壊されたことへの慰謝料請求

墓石そのものは加工された石であり、客観的に見ればただの「モノ」ですが、心のよりどころとしている親族の方にとっては特別な思いが込められた神聖な場所であり建造物であるから慰謝料は損害賠償に相当すると認められた判例が以下の通りです。

物損事故で墓石を損壊してしまった場合は慰謝料も損害賠償の対象になると思ったほうが良いでしょう。

■平成12年10月12日/大阪地方裁判所/判決/平成11年(ワ)第12268号、平成12年(ワ)第1207号 保険金代位請求事件(第1事件)、損害賠償請求事件(第2事件):自保ジャーナル1406号4頁

「物損事故における損害については、修理費用等の財産的損害が填補されることによって損害の回復が果たされるのが通常であるから、原則として、物を損壊され たことにより被った精神的苦痛に対する慰謝料請求は認められないというべきであるが、通常人においても財産的損害が填補されることのみによっては回復されない程度の精神的苦痛を生じるものと認められる場合には、財産的損害以外に精神的苦痛に対する慰謝料請求も認めることができるというべきである。本件にお いては、本件墓石等の上に本件レンタカーが乗り上げ、墓石が倒壊した結果、埋設されていた骨壺が露出される状態になったことが認められるところ、一般に、 墓地、墓石等は、先祖や故人が眠る場所として、通常その所有者にとって、強い敬愛追慕の念を抱く対象となるものということができるから、侵害された物及び場所のそのような特殊性に鑑みれば、これを侵害されたことにより被った精神的苦痛に対する慰謝料も損害賠償の対象になるものと解するのが相当である。上記慰謝料の額としては、10万円をもって相当な額と認める。」

事故で芸術作品が破損したことへの慰謝料請求

この世に1点しかないような芸術作品を交通事故で破損してしまった場合、その芸術作品の所有者に対して認められた慰謝料が100万円だったケースです。

物損事故の慰謝料としてはかなり高額ですが、買い替えができないという特殊性と完成に至るまでの労力を鑑みればこの金額でも少ないような気がします。

■平成15年7月28日/東京地方裁判所/判決/平成12年(ワ)第27114号:交通事故民事裁判例集36巻4号969頁

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「本件作品の芸術的価値は、相当程度高く評価されている上、原告にとって、本件作品は、大学院卒業後初めて公の美術館に展示され、プロの作家として認められ た記念碑的作品であるともいうべきものであって、原告が、1年という制作期間を費やし、陶板の制作のために長い工程を経て、時には作業が徹夜に及ぶなど多 大な労力をかけて制作した思い入れのある作品であるにもかかわらず、被告の一方的過失によって惹起された本件事故により、陶板の多数枚が破損し、その破損 状況や程度からして、もはやそれらを復元することができず、二度と同じ作品を制作できなくなったことが認められ、本件事故によって原告が受けた精神的打撃 の大きさは容易に推認することができる。

以上のとおり、本件においては、被害物件が代替性のない芸術作品の構成部分であり、被害者が自らそれを制作した芸術家であることのほか、本件作品自 体の芸術的評価、制作に至る経過、完成までの工程に鑑みると、客観的にも本件被害物件の主観的精神的価値を認めることができるので、原告が被った精神的苦 痛に対する慰謝料は、本件事故による損害賠償の対象となると言うべきである。そして、上記事実関係に加え、上記2の認定、説示のとおり、本件被害物件の具 体的な財産的価値が算定できない事情を考慮すると、その金額としては100万円と認めるのが相当である。」

事故で特別限定車が破損したことへの慰謝料請求

物損事故で損害を被った車両が特別限定車であったとしても、慰謝料は請求できないという内容の判例があります。

たしかにこのような理由で慰謝料請求を許してしまうと、なんでも愛着を持っていれば慰謝料請求ができるということになりかねません。

とは言え本当に愛着を持って所有していた場合は、到底納得できない判例であることもわかります。

■平成15年8月4日/東京地方裁判所/判決/平成14年(ワ)9377号等:交通事故民事裁判例集36巻4号1028頁

「原告は、アウディ九〇―二・三Eの中でも特別限定車とされる被害車両に強い愛着を持ち、相当の費用を掛けて保守・整備を行っていたこと、本件において、加害者本人から原告に謝罪がされたことはないこと等の事実が認められるが、このような事情が存在するだけでは、財産的権利の侵害を理由に慰謝料を請求することはできないと解すべきである(本件の交渉過程について、被告ら側に特段責められるべき点のないことは、後記のとおりである。)。」

事故後の加害者の対応の悪さに対する慰謝料請求

事故が発生した後に加害者が不誠実な対応をして、その不誠実さに対して被害者の慰謝料請求が認められたケースです。

事故後の対応が悪ければ、それも含めて損害賠償と考えられているようです。

このような物損事故に係る慰謝料を含めた物損事故に対して、元々自賠責保険の補償は一切ありません。

物損事故の保険対応は任意自動車保険で賄うのが一般的ですが、例えば対物保険に加入していたとして、不誠実な対応をした場合でもその慰謝料請求に対して保険金を支払ってくれるのか?と言う疑問が浮かびます。

多分ですが不誠実な対応をしたことによって生じた慰謝料は保証の範囲に入らないので保険金は支払ってもらえないのではないかと思います。

■平成15年2月28日/京都地方裁判所/判決/平成14年(ワ)第765号損害賠償請求事件:自保ジャーナル1499号2頁

「被告は、飲酒運転をして本件事故を発生させた後、そのまま事故現場から逃走したこと、そのため、原告が事故現場付近を探索したところ、数百メートル離れた駐車場に損傷した被告運転の車両を発見し、本件事故の加害者が被告であることを突き止めたことが認められるところ、以上のような本件事故発生前後の被告の態度の悪質性及びこれにより原告が一定程度の心痛を受けたであろうと推認されることに鑑み、慰謝料として10万円を本件事故と相当因果関係に立つ損害と認める。」

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